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試高の間 


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Shikouno Ma *Testing Room

試行錯誤日誌
管球工房で制作したパワーアンプJB−300Bの改良や球の差換えと試聴を繰り返した記録である。

S1 左右のバランスなど違和感について
暫く聴き込むうちに耳測定器が少し冷却し感度アップしてきたのか?左右の位相バランス(音源の定位が薄く音にまとまりがない)に疑問感じてきた。試行錯誤して調べると、入力初段NFBが掛かっている12AX7(チャイナ製)が怪しいと考えた・・・(左右タマを入換えたがバランスが変化するのみだったので注目した)そこでプリアンプ予備のECC83(シーメンス)に換えたところ、定位が良くなり音に佇まいが出てきた。どうも入力初段、内部パラ接続している左と右個々のNFB感度又は位相特性のバラつきが原因だったようだ。

S2 チャイナ製はバラつきが大きい?音質が硬い?
双3極管を内部一対で左右CHに使用するような回路であれば問題ないと思われる。チャイナ製はバラつきが大きいと聞いていたが、使用回路によってはメジャーの物が良いと感じた。KIT付属の球はとりあえず、もしもの事を考えて回路変更時など、動作確認用と割り切ればコストパーはOK。エントリー管は音質が高域寄りで硬い傾向が見られる。KIT自作に自信のある方は管球なしキットとし、球はスロバキア(JJ)や余裕があれば300BはハイクラスのWE復刻版や本物WEなどを別に購入するのを推奨する。

S3 球のエージング不足
12AX7(チャイナ製)のその後について、しばらくプリアンプの問題ない回路に使用していたが、それでもと思い元のJB300Bの入力初段に戻したところだいぶ音の位相差と定位が良くなっていた。まだエージングが不足していた音で評価してしまったようだ。この球は現代的な周特の広さとスピードのある音がするので現在はこのまま使っている。付属300Bもエージングしたところ安定した良い音がしている。まずは安心という事でしばらくは聴き込んでみたい。

S4 JJ社製真空管300Bに挿し替えた
JB300Bを製作してから早くも3ヶ月近くなり、付属の300Bも益々クリアーな音になってたが人気のJJ社製真空管300Bマッチドペアーが入手できたので早速、差し替えて見た。ベースは陶器製で、すべてに作りもしっかりとしていてガラスは工芸品のように綺麗にみえる。KIT付属のものより一回り大きく電極も太くて頑丈そうである。この球はメーカーによりマッチングされている2本が1セットの仕様で一本ごとに手書きの試験データーが添付されて信頼感がある。音はまだエージング中だが、さすがヨーロッパ伝統の濃密な響きに驚きの結果を堪能している。さてこれからもっと音がよくなっていくと思われるが・・・球を楽しむにはあせりは禁物、じっくり聴きこみ評価したい。

JJ社製真空管300Bマッチドペアーについて
入手先はBOI(USA)個人輸入となったが関税は掛からないため、国際郵便送料と国内消費税(受取時払)のみで、円高との相乗効果によりこの時点では最も割安に購入できた。
BOI(日本語に対応HP) http://www.boiaudioworks.com/ パワー管マッチングにはこだわっており2本以上でも5%以内に厳選しているようで、確かに音の定位も良い。しかも願客の使用機種と回路を参考に、よりマッチしたセレクトをしてくれるようである。JJ製300B (MP)派手さは無いが全域において洗練された音質である。高域は濃密かつ低中域に立体的な厚みを表現する。製造しているチェコ、スロバキア地方は楽器やガラス工芸で有名な工房が多い所以からか、手に取って見ると良い球はガラスも違うように感じる。確かに材質の響きが重要だという点を見れば管の全ての部品は楽器だといえなくも無い・・・。
外箱とMP管本体、手書き試験データーが添付される。300Bの中で高音質コストパフォーマンスは良い。

 JJ300B    PSVEN-300B

S5 JJ社製真空管300BとKIT付属300B(サンバレープレミアムセレクト)の聴き比べ
KIT付属300B(サンバレープレミアムセレクト)は形状サイズともオリジナルのWE300Bにかなり近い、音質は高域に伸びがあるため、きつめのソースもサラリと流し、いやなピークは感じない。低域も抜けがよくチェンバロやジャズのベース、ドラムは快適。全体的には送信管のように重心が高く、高域は細身で分散傾向に感じられる。JJ社製真空管300Bは高域は伸びの中にも音に芯があり濃密さが感じられる。低域は伸びがあるためオーケストラでは量感と柔らかさの表現が良く出る。ジャズのアタック音は少し角がとれた感じがした。全体的に少し重心が低く、あえて分類すればヨーロッパ系”2A3”の表現を太めにしてパワーを加えた感じがある。両者いずれも単独で聴いたのであれば、それぞれ満足の行くハイレベルな個性であり、良く聴くソースと好みの違いで選択する程度の微妙な、しかし大切な違いであるように思う。

S6 整流管を5U4G(Sov)に挿し換えた 
KITに付属していた傍熱型の整流管5AR4(GD)を 直熱型の5U4G(Sov)に挿し換えてみた。
GTソケットピン配列も互換。出力電圧は若干低下するので一抹の不安があったが、ソフトな立ち上がりで実用上全く問題なく動作している。肝心な音質は換えてすぐに違いが解るほど、中高域は透明感が、中低域は柔らかさが増し、バイオリンは弦の艶と躍動感が伝わり、ピアノの響きと余韻が感動を呼ぶ。シリコンダイオード整流から球ならいざ知らず、整流管の換装でこんなに音の違いがあるとは驚きの結果であった。昔の達人は出力管によって整流管の使い分けをしていたという話も信じられる。
試聴LP: チャイコフスキー 「ピアノ協奏曲 第1番」  イタリアバロック・バイオリン 「ラフォリア」

JB−300B のJJ社製 300B 並びに5U4G(SOV)に換装後の形体
   

S7 LUX A3550 ビーム出力管 GE6550A-PP VS JB300Bの聴き比べ
王道室で紹介している ビーム管6550A/KT88のPP使用のアンプA3550(A3とする)との聴き比べをしてみた。試聴機器は上記プリアンプまでは共通でJB300B(JBとする)パワーアンプだけを入れ替えるという比較である。さすがにA3はPPだけ有り余裕のパワーでジャズのベースドラムの低音やオケのグランカッサなどを難なくこなす。一方JBも衝撃的な低音には無理があるものの、素直に広がって行くビロードのような包容力がある。高域音はJBの直熱管+シングルが定評どうり滑らかな刺激の少ないシルクの手触りで好感がある。特にクラシックの弦楽器などでは違いが現れるようだ。A3の高域はJBに比べ手触りは粗いものの上質の麻ジャケットをざっくり着こなしたような爽快感がある。A3はジャズドラム、ピアノのキレの良さや管楽器の高音噴出しのエッジにパワーがある。ボーカルもクラシックではやはりJBのほうが高域の抜けのよさとピュアな存在感がある。A3はジャズボーカルの中低域の押し出しと気風のよさが心地よい。総括すると中高域の質感ではJB300Bがピュアでかつ刺激的で無く、心を癒してくれるアンプである。対してジャズ、ロック系の刺激を求めたい場合は中低域の物量パワーでLUXアンプA3550を選びたい。

S8 JJ社製真空管300Bと PSVANE 300Bの聴き比べ
PSVANE-300Bを入手したのでJJ300Bと聴き比べてみた。PSVANE300BはIP=MAX84mのマッチドペアーである。音質は高域に伸びがある低域も十分な量感があり、かつ抜けがよい。
特にジャズセッションは気持ちが乗ってくる!価格に対するコスパは大変良いのでお勧めである。JJ300Bの音質はS5にあるようにヨーロッパ調の少し落ち着いたセンスの良いもので、これも好みを分ける。

JB−300B  PSVANE 300B に換装後の形体
    

S9 整流管を SOV製の5U4GからTRIODE-PSVANE WE274Bに交換
WE300Bオリジナルの古典アンプには、やはり直熱管のWE274Bが整流管として使用されていた。
PSVANE WE274Bを入手したので差し替えてみた。5U4Gも直熱管であり、前記のように良かったがWE274BはオリジナルWE製を研究し復刻させたものである。
聴き比べてみると低域の伸びと広がりが増し高域は弦楽器の揺らぎまで感じるようだ。価格は高めであるが、挿してみるに十分値する存在感である。
ヒータを引き上げるのにオリジナルと同様に釣り竿のような金具を用いている(エントリー管は数個のコイルバネを使用)温度による位置とテンションが調整される絶妙な構造だ。

JB−300B  TRIODE-PSVANE WE274B に換装後の形体
   

外観、内部構造、材質など細部にわたり忠実に再現されている。違いはベース部に刻印されたシリアルナンバーとロゴマークのみである。
保証書、説明書が添付されていて、音質のみならず品質に対する自信が見える。

なぜ球には球の整流管が良いのか?推測になるが半導体ダイオード整流は波高値で整流するためレスポンスが速い、すなわち短時間で大電流が流れるため電源周波数の2倍に対する高調波が出やすいのに対し、球は敷居値が曖昧な実効値整流を行う。このため高調波が出にくく、一見欠点のように思えるレスポンスの遅さも出力管にとってはパワーTRのように急激な歪には至らない、むしろソフトディストーションとなり自然と圧縮効果につながるのではと考える。非力な事が最大の利点になるなど真空管の最盛期には夢にも思わなかったであろう。外観もやはり300Bにはダルマ型整流管がよく似合う。 

S10 TRIODE-PSVANE WE300B と PSVANE 300Bの聴き比べ
WE復刻PSVANE-WE300Bを入手したので、PSVANE-300Bと聴き比べてみた。
まず以前から使用のPSVANE300Bはマッチドペアー管である。音質は高域に伸びがある低域も十分な量感がある。抜けがよい分、硬めで多少エッジが立った音になっているようだ。高域が少し荒い感じが逆にジャズ向きか!エントリークラスでは価格に対するコスパは大変良い。ではPSVANE-WE300Bであるが差し替えて初音で目から鱗状態である。低価格の球を何種類も購入して試聴してきたが、そこそこの音は出るのに何処かに納得できないものがあった。オリジナルのWE300Bは残念ながら聴いたことはないのであるが、この様な美音なのだろうと思わせる。低域はダンピング良くふくよかで深淵である。中高域は弦の響きや肉声も自然で伸びがある。価格はエントリークラスの4-5倍であるが、思い切って購入してみた価値はあった。この音にたどり着くまで、だいぶ遠回りしてしまった感じがある。

JB−300B  TRIODE-PSVANE-WE300B に換装後の形体
ヒータを引き上げるのにオリジナルと同様に釣り竿のような金具を用いている(エントリー管は数個のコイルバネを使用)温度による位置とテンションが調整される絶妙な構造だ。
  

精密に復刻された、ウエスタン300B。 TRIODEがその品質と、音質に惚れ込んだ! 
TRIODE製品のグレードアップ用として、あるいは汎用300Bアンプのグレードアップ用真空管として 十分な性能と安定度を誇る高品位な真空管である。 
真空管のベースにシリアルナンバーとPSVANE 300Bロゴが刻印されている。 
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それでは、希少なビンテージ品やハイクラス復刻品などを良い音で長く動作させるにはどうしたらよいか?は次の点を考慮する必要がある。
計算方法: 300Bを例に取るとA級シングル動作は最大規格として SP出力:17.8W プレート損失:40W Ep:450V Ip:80mAとなっているが、この状態のまま持続使用できるわけではない。寿命1万時間以上のロングライフにするため、最大規格の約80%以下を推奨する。図Aでは規格特性表からバイアス:-67VとするとIP:67mA流すにはカソード抵抗は1KΩとなる。プレート電圧は404Vなので、球に加わる正味の電圧は404V-67V=337V プレート損失:0.067A×337V≒22.5W SP出力:8W と余裕の動作に設定される。オートバイアスとも言われるように基本的にはメンテナンスは必要ないが球に敬意をはらい無理をせず貴重なオリジナル真空管などを末永く楽しみたい。
プレート損失 : 球のプレートとカソード間に架かる実電圧とA級増幅の場合、無信号時に流れている電流を掛算した発熱やロスも含む総消費電力のこと。
SP出力: 球で増幅されたオーディオ信号がアウトプットトランス(OPT)を通過してスピーカを駆動できる電力のこと。
図A   念を押すが、感動する音は「何ワット出る」というような出力値ではない。微小な音の中に真実は埋もれているのだから。

S11カップリングコンデンサーAMCO474フイルムコンに交換した。
電送歪の発生を極力減少させる構造を採用したのが特徴(単価:約 500円ほど)フイルムコンはスプラーグのオレンジドロップなど以前からF特が良い、漏れ電流が無く長期に安定していると定評があったが、このAMCO474はさらに低歪性能が向上している。KIT標準部品は東一オイルペ−パ−コン 0.1μF/630VDC ビタミンQ(単価:約 600円ほど)を前段も含め4個使用していたので全てAMCO474(630V、0.47μF)に交換した。試聴音質はバイオリン等の弦の余韻が金属音にならず材質まで感じられる。低音楽器もエンドまで素直に伸びる。中域から高域に掛けてバイオリン独特の裏返すような音色も完璧にトレースする。また確かに低歪やF特が良いためか音の抜けや立体感が向上している。標準部品のオイルペ−パ−コンも定評のある良い物だがフイルムコンに換えて、また々「目から鱗」の体験をした。今まで音質向上の試行を行ってきた中でコストパフォーマンスが一番良く、まずはお勧めの方法だと思う。
試聴LP: バイオリン名曲集「G線上のアリア、ラ・カンハネラ、チゴイネルワイゼン他」 ビクター社

  AMCO474シリーズ  高性能であるが価格はそれほど高くない

この部品は外形が大きめなのと、OFC金メッキリード線を採用しているが線長が短かいため、他とショートしないようリードに絶縁チューブを被せて最短のレイアウトで配線する。

カップリングコンをAMCO474(630V、0.47μF)に4個共交換後のドライブ回路周辺の配線形態。


S12 12AX7(ECC83)GD製をJJ製ECC83S-MPに差換えた。
JJ300Bを入手したBOIよりJJ製ECC83Sマッチドペアー(MP)を購入したので差換えてみた。GD製12AX7も前記したようにエージングを十分行った後は定位音質ともに安定しエッジの効いた現代的な音である。対するJJ製は高域が伸びてはいるものの押し付ける様なところは無く、中低域ともに実在感があるヨーロッパ調の熟成した音質である。MP仕様のためかエージングはほとんど行わずに試聴に入ったが定位など音質に問題は無かった。老婆心ながら、MPと単品の価格の差は僅かなので実装後の不具合を考えると迷わずMPを購入することを推奨。試行錯誤の結果まだ道のりは遠いが音は一歩づつ理想に近くなったように思う。

JJ製ECC83S-MP 整流管を除く球をJJ製で統一した形態。



S12 NFB回路にON/OFFスイッチを追加して音質を比較
NFBオン・オフSWを切り替えて試聴を繰り返したところNFBをOFFにした方がトランジェントが良く説得力がある。NFBをOFFにすると利得を抑えていた負帰還が無くなるため、NFB量=6dBならば同量の増幅度が上がり、飽和や歪が発生しやすくなる。逆に言うとNFBを掛けるには前段の入力感度を上げておく必要がある。当機は電圧増幅部と出力管ともに3極管を使用しているため、OFFでは多少の荒削りな面を垣間見せるが、歪や高域の暴れは多極管ほど急激に発生せずに済んでいるようである。PA入力レベルボリュームを若干絞りレベル配分がマッチしたのか立ち上がりの良い音になり伝送系S/Nも向上したので現状はOFFの無帰還に設定して聴いている。ONに設定すると高低域の伸びと歪が改善され透明感や滑らかさが表現される。このへんは個人の好みとソースのジャンルにより選択するレベルである。実際のSWの位置は配線加工の都合もあり下図120K帰還抵抗の右OPT側に追加した。NFBの有無と音質の違いを一度は試聴してみるのも有効な手段である。

JB300B前段部負帰還SW回路(部分)
 回路図は片CHのみ表示。
参考画像提供 サンバレー(発売元:ザ・キット屋)

JB300B 電圧増幅部NFB回路のON/OFFスイッチを追加 2回路2接点でLR同時切り替えを行う。SWを単線でラグ板に配線し固定した。底板を外した状態で操作する。一時的な実験であればこの部分の配線を外して端末を絶縁しておいてもNFB無しに出来る。

 


S13 電源回路にLRアイソレーションCRを追加して音質を改善
JB300Bの電源はLR共有回路であるため、セパレートアンプのようにCH独立電源を持った回路と比較すると、クロストーク歪みやレギュレーションノイズなどでステレオ分離や音質に不利な影響がある事は否めない。
そんな折、当HPに有志よりメールで電源回路LR分配にアイソレーション抵抗とCを追加して音質を改善できる」との提言をいただいたので、早速に改造実験を行ってみた。
まずB1チョークコイル出力から電解コンを経由して左右OPトランスに行く配線を切断して、各CHに30〜100オーム10W程度のRL同値抵抗をそれぞれ直列に追加し出力側に0.1μ500VのCをアース間に追加する。
B2も同様に100Ω3W程度のRL同値抵抗をそれぞれ直列に追加し出力側に0.1μ500VのCをアース間に追加する。
さらにB3も同様に100Ω1/2W程度RL同値抵抗をそれぞれ直列に追加し出力側に0.1μ400VのCをアース間に追加する。
要はLR各アンプステージへのB電源にデカップリングフィルターを組み込み、相互に影響を及ぼさない様にする改造である。
追加する抵抗値にもよるが、300Bへの供給電圧は低下するので、最大出力も若干低下する。
以前に直熱整流管5U4G(SOV)に換装していたが、一応オリジナルの房熱整流管5AR4に戻して供給電圧を上げてみた。

電源部改造 接続回路図 


実体写真:改造図面では少ない部品だが、部品形状によっては実体スペースと中継部品が必要であった。
抵抗6個、コンデンサー6個をラグ端子等を用いて配線し、各増幅段LRに分離供給した。

    

電源部改造: 図赤下線で示す100Ω程度の抵抗を左右B1・B2・B3電圧供給線にそれぞれ直列になるように追加接続する。
追加抵抗の出力側とアース間に0.1μ500V程度デ・カップリング用Cをそれぞれ追加する
部品の数値はLR同値、Wや耐圧は余裕があるものでLRが揃っていれば、各ステージで多少変更しても手持ちの部品を活用できるだろう。

音質:今まで中央により気味でぼやけていた音像の定位が良くなり、ステレオ分離が向上した。
ポップス、ロック、など刺激を求めると少し音は硬くなるが整流管は5AR4/GZ34等の出力電圧が高めの球が良いだろう。
また低能率スピーカを鳴らしている場合も同様である。当然だがNFBはOFFの状態で比較したが好みによりONしてみるのも良いだろう。
パワー重視の諸氏はこのような改造に関心は無いと思うが、最大出力は若干低下するので了承されたい。

直熱整流管5U4G(GTソケット互換)と交換すると300BへのB電圧はまた少し低下する。
しかし定位感は良好の状態で保持され通常使用では電圧低下の影響は皆無であった。
音質:直熱管の特徴であるソフトで立ち上がりが早く、羽のような軽さとなる癒し系の音質である。
私的にはSRMスピーカは能率も高めであるのと小中音量でジャズ、クラシック等を良く聴くので、この5U4Gの選択としている。

S13-A 電源回路LRアイソレーション抵抗をトロイダルコイルに変更でさらに音質を改善
実体配線図:左右B1・B2直列に挿入した100Ωの抵抗を小型トロイダルコイルに変更した。



特に初段をトロイダルコイルにすると効果が際立つようだ。
高域の美しさは素直に体に溶け込んで、低域は無限の大地に拡散して行く様だ。

S14 入力部の周波数特性を向上してレスポンス改善
下図赤丸で示す100μF 25Vのデカップリング用Cを初段12AX7のカソード−GND間にLRそれぞれ追加して周波数特性の改善をする
Cは好みの音質になるよう100μ位までの容量を選択して調整する。Cが小さいと高域が強調され、大きくすると低域が強調される。
現在は100μ程の電解コンデンサーに変えている。入力部は音質に影響するので、出来るだけ良質な部品を推奨する。
必然的にNFBは無効となるので、NFBスイッチはOFF側にしておく事とする。

NFB回路の改良: 上記の状態でNFBを有効にするには1Kのカソード抵抗と並列Cの下GND間に100Ωを直列に追加する。
改造により帰還量が不足するため、OPトランスNFからの減衰用抵抗を120Kから60KΩに変更したが、そのままでも良いだろう。
追加した100Ω上の中点にNFB配線を加えることで有効に出来る。帰還量は減衰用抵抗を好みの値に調整する。

入力部の改造回路図:下図の追加コンデンサーには良質でLR共に特性の揃った部品を推奨する。
10μF25V程度のタンタルコンデンサーを下図100μF25Vに並列追加するとさらに高域特性が向上するだろう。

  
参考画像提供 サンバレー(発売元:ザ・キット屋)

入力部12AX7カソードに抵抗とコンデンサーを追加した効果。

音質:入力部における周波数特性改善の効果かメリハリが良くなり残響音や、楽器の摩擦音ボーカルの呼吸音などが浮上してきた。
また低域のキレが良くなり躍動感があるベースが聴ける。特にジャズライヴ演奏などの熱気や雰囲気が良く伝わって来るようになった。

評価:少ない部品で効果はかなりあるので改造してみる価値は十分にあると考える。

S15  プリアンプ マランツ#7での 双3極管12AX7/ECC83メーカー型式・挿し換え音質比較
ECC83(12AX7)のメーカー挿し換え音質比較
まず一般的に使用することが多い、双3極管ECC83(12AX7)を違うメーカのものと差し替えてみると全く音質の違う事が判る。同じ有名なメーカーの同種の球でも一本ごとに微妙な差がある。またどこの部位の回路に使うかによっても音質が違うので、適材適所を探すという楽しみもあり、ベストマッチした時など至高の喜びである。

@シーメンス(SIM): 全体にしっとりとした中に抑えられたきらめき感がある品のある音で派手さは感じられない。ローノイズで繊細な音を聞き分けたい、どちらかといえばクラシック向き、弦楽器などは最高!現代では入手困難なため、ビンテージである。
Aテレフンケン(TFK): 全体にキレがあり高域に華やかさが多い元気がある音かつローノイズで、ドイツ音楽ビッグバンドジャズ向きで増幅度も比較的大きい、とにかく現代では入手困難なため、これもビンテージである。
Bゴールデンドラゴン(GD): パワー感があり音のキレも良好、低域の伸びと量感も良い、ポップスやボーカル向きか、実際の増幅度も高めでプリの出力段などの負荷に強いが個体により多少ゲインの差が出る場合もある。現行生産品で低価格で購入できる。個人的には中国製特有の高域の荒さが少し気になるが、うまく使えばインパクトのある音になる。
CゴールデンドラゴンECC83T:プレミアムTセレクトである。低域から高域まで伸びが良く、きめ細やかな音質と安定感がある。
DJJ/テスラ(ECC83S): シーメンス同様ヨーロッパ的な落ち着いた音、老舗テスラの伝統を引き継ぎ現在生産しているメーカーの中で高音質でありながらコストパーは良い。高信頼管ロングプレートのECC803Sは負荷に強く、特に最終出力段には推奨できる。現行生産品で購入できる。
EJJ/ECC803S: 高信頼管ロングプレートである。パワー感のある落ち着いた音色、やや低域よりの傾向。出力に余裕が見られるため、プリアンプなどの出力段向きか?贅沢ではあるが、音質の相性が良い現在入手可能な球(下記JJ製など)を多めに購入し、差し替えセレクトして見るのがお勧めである。
評価入力段でも球の違いでかなり音質の傾向が変わることがわかった。

マランツ #7(USA) Marantz 真空管プリアンプ (画像A上部)
双3極管ECC83(12AX7)のメーカー別、挿し換え試聴結果、適材適所ベストマッチな管球構成 =>  レコードプレーヤ --> イコライザー(JJ/ECC803S)R/L 2本 -->入力切替部(JJ/ECC83)R/L兼用1本 --> トーン・コントロール(JJ/ECC803S)R/L 2本 --> 出力増幅段(JJ/ECC803S) 1本 --> パワーアンプ

評価:全体的にJJ/ECC803Sが低域から高域までに伸びと艶かつパワフル感があり、これでも十分いけるが、入力切替部の(R/L兼用1本)をグリッド容量負荷が小さい(JJ/ECC83S)に替えたところ、さらにスピード感とインパクトのある音に!これぞツボにハマったベストマッチとなったのである。

S16 パワーアンプ JB-300B:入力部双3極管12AX7/ECC83挿し換え音質
JB300B 入力段12AX7A(ECC83)挿し換え比較・・・
メーカー別、挿し換えを行い、同メーカーの同種もセレクトをした試聴結果は
JJ/テスラ(ECC803S)がパワー感、音の抜け、ハーモニー、余韻が最も良かった。
現在この2本ペアーを入力段に使用している。これにより幅広い音楽ジャンルに対応した再生ができるようになった。

  (画像A)

各社12AX7/ECC83の外観



左から テレフンケンECC83、シーメンスECC83、ゴールデンドラゴン83T、JJ/テスラ83、JJ/テスラ803S

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