Kankyu

管球伝説 
  

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Kankyu densetsu

真空管の魅力・・・落としたら壊れ、酷使すれば短命の儚さ、しかし大切に扱い、余裕と敬意をもって使えば、珠玉の音世界に誘われる。

伝説の管球と名機

画像は部分的に説明用としてカタログよりのもので、著作権は発売元にあるものとする。

ウエスタン・エレクトリック社   WE300B 

主にトーキー映画のアンプ用に使用されていたため、一般市場にはほとんど出回らなかった。このため、ビンテージ管は幻の存在である。一時は復刻版が同社から純正として正規輸入された時期があったが現在はPSVANEブランドが忠実に復刻されたWE300Bを発売している。ほかには中国(GD)、ロシア(EH)、スロバキア製(JJ)他の互換球も多く流通するようになった。高出力と高音質が両立して得られるため、人気が高く3極管の王者として愛好者が多い。直熱フィラメント電圧はEf=5Vと特殊だが電源トランスなどは現在でも入手容易である。300Bの仕様は管球資料室2参照

    ビンテージ WE-300B オリジナ

WE300Bハイクラス管とエントリー管の構造上の特徴
オリジナル管(復刻ハイクラス管)で目につくのは、ヒータ上部フィラメントを引き上げるのに釣り竿のような金具を用いている点だ。
温度変化による位置とテンションが最適に自動調整される絶妙な構造である。 
特にPSVANE WE300B復刻管を見ると4本の細い金具を使っていて繊細な構造を忠実に再現している。
JJ300Bも方式は同じだが、独自の技術による全体的にガラスの厚さや部品は頑丈な造りで出力UPとなっている。
一方のエントリー管は作り易いためか数個のコイルバネを使用している
他にもハイクラス管とエントリー管では加工精度、プレートの材質やコーティング物質の違いなどが見える。

WEを詳細に復刻したハイクラス管 PSVANE WE300B       
 PSVANE WE300B
WE300B シングル増幅回路 標準試験データ : 詳細は管球資料室2参照
1、プレート電圧 300V グリッド電圧 -61V アイドリング電流 62mA 
2、プレート電圧 350V グリッド電圧 -74V アイドリング電流 60mA 
*プレート電圧 =管のプレート・カソード間に架かる実効正電圧 
*グリッド電圧 =グリッド・カソード間に印加されるバイアス負電圧
*アイドリング電流 =増幅回路で無信号時に常時流れている電流

独自の技術で耐久性と出力を増強したミドルクラス管 JJ社製 300B 
   JJ社製 300B


ウエスタン・エレクトリック社 WE274B  トーキー映画のアンプ用WE300Bの電源回路として開発された名球である。
画像は詳細に復刻したハイクラス整流管 TRIODE-PSVANE WE274B
上部フィラメントの固定はオリジナルと同じく2本の細い釣り金具を使っていて、他も全てが忠実に復刻された構造である。
     

PSVANE 300B  エントリー管は数個のコイルバネを使用 
 

WE−91B
WE-300Bをシングルで使ったアンプとしてその信頼性と設計の良さが語り継がれている。初めて原型のWE-300Aが1936年にWE-1068トーキー映画アンプシステムのWE-86アンプに使われた。その後WE-91Aに使用、改良された300Bが投入されると91Bに改版となった。電圧増幅はWE-310A(Ef=10V)を2段使い、十分な増幅度を得ている。入力はフォトセル用にT1で昇圧しハイゲインとしている。整流管は274Aを採用して300Bとウォームアップ時間を合わせている。回路図は管球資料室参照 オリジナルはモノラルアンプ オーディオ用には入力Tと初段を省略する回路が参考にされてきたがオーバーオールのNFBなどの極めて高度な補正が施されている回路は今でも色褪せない。現代版復刻アンプがステレオ仕様で サンバレー SV-91BU (発売元: ザ・キット屋)として発売されている。
 SV-91BU

往年の兵(つわもの)達
左から 5Z3 高真空ST整流管 ヒーター5V、UX4ソケット仕様 US8ソケットに変更で274B5U4G互換性能であるが球によってウオームアップ時間と出力電圧が若干増減する。近代では5AR4など高出力の小型整流管があるが、やはりダルマは姿態が良い。中央は 6C6 G電極が管上に出ている電圧増幅管でヒーターEf=6V、ソケットUZ6ピンヒーター以外の外観及び特性は上記WE-91Bに使用されていたWE310A(Ef=10V)の同等品である。グリッド入力C容量を小さく出来るため初段に使用した。ヒーターが3.5VのCZ-501D(NEC)も特性と外観は同等品。右側 76 ST電圧増幅3極管 は下記詳細



5Z3  中央 6C6 右側 76 人体の曲線に似たプロポーションのST管は見ているだけでも最高である。

三極ST管 76
ローミュー管のため増幅利得は少し低いが、特性の素直さまた直線性の良さからドライバー管の中では逸品であった。当然300Bのドライブには相性、姿ともに最高のパートナーである。銘球2A3も濃密な音で信奉者も多いが、これとも良く合うため組み合わされた。この外装の艶かしい曲線は他に例を見ないほどの逸品である。UX4ピンソケット
2A3及び76、KT-88の仕様は管球資料室 パワー管参照

    懐かしいST管 76

6550/KT88
6550はKT88とほぼ同等の特性で差し替えが出来るビーム管。300Bと並んで最も人気が有り歴代のアンプに使用された。そのPPで40W以上という余裕のあるパワーと耐久性は王者の風格である。両者は現在でも中国、ロシア他の各メーカーで生産されており供給は心配ない。  US8ピンGTソケット仕様
詳しくはKT-88特性表参照
   
GE製 6550                       KT-88 ゴールドライオン製

 JJ製KT-88  画像提供 boiaudioworks

6B4G
銘球三極管2A3の長所を継承したGTタイプ三極管として隠れた実力と人気があった。近代管と共用性のある6V系のヒータ電圧以外は2A3と同等の特性が有りPP回路など作りやすいため自作アンプに重宝された。

SYLVANIA 6B4G 2枚プレートのオリジナル管 と 現行管6B4G いずれもUS8ソケット
   

2A3
直熱三極管 WE300Bが業務用で一般には入手不可能だった時代、民生用としては1933年ごろからRCAがWE300Aに対抗して開発した2A3や小出力用の45などが広く使われた。中でも2A3は出力も大きく高音質と素直な特性だったのでオーディオ用には多く用いられた。初期は1枚プレートだったが、その後には出力増強のためか2枚プレートなどが派生している。しかし音が良いと1枚プレートの方が人気であった。フィラメント電圧は2.5Vと低く交流点火でも比較的ハムノイズは出にくい。現在でも互換球が生産されており供給は豊富である。 UX4ソケット仕様

2A3 1枚プレート(左)と 2段プレート(右)    RCA製 2A3  画像提供 boiaudioworks
   

マランツ#7 USA Marantz  1950年代〜
マランツ真空管プリアンプの傑作、全て3極MT管ECC83(12AX7) 6本を使用、部品も逸品を列挙する通称ビューティーと言われる化粧ウッドケース付、シリアルナンバーでプレミアムが異なる。後にTRバージョン(#7T)も発売され現在のシリーズに継承されたがプレミアムはいまひとつである。初代の#7があまりにも人気が高かったため、復刻版や#7k(KIT版)も発売された。イコライザーの音質にも定評があり、今も多くのアナログファンに標準プリとして使用されている。同社パワーアンプの#8B#9も名機とされている。(USA)

マランツ ステレオ コンソール と刻印されたフロントパネル 本体内部構造は王道室参照

         回路図は管球資料室参照


マランツ#8B USA Marantz
ソールBマランツがマランツ社を設立し#7とともに1953年から1961年にかけて発売されアンプの標準機といわれるほど高い完成度を持った。増幅部は、左右CHがほぼ対称に配置され回路は細かく補正調整が施されている。CA7/EL34 のPP回路で20W×2CHステレオ  回路図は管球資料室参照  

 

 6CA7/EL34 US8pinソケット 特性、信頼性共に完璧な管球と言える
画像提供 boiaudioworks

QUADU クオード
1953年イギリス製 業務用モニターとしても高信頼性から使用され、タンノイも自社のスピーカーに最も合うアンプとして推奨した。 特徴は出力トランスにカソード巻き線を設け負帰還を掛けていることで理想的な動作を実現したユニークな回路である。 KT66 のPP回路でモノラル 現在 QUAD2 - Classic として復刻している。

 回路図は管球資料室参照

SQ−78  ラックス
LUXの傑作アンプといわれるSQ-38は出力管に伝説の銘球NECの6RA8をPPで使用する。この球は2A3の音質がMT管に再来したとしてビロードのような中低域と抜けの良い高域で人気があった。また伝説のハイインダクタンス出力トランスOY-14-5との組合せによりシルクのような音質であった。この後継機SQ−78は同じく逸品の血統を引き継ぎ、独特の緻密さがあり凝縮した世界を展開する。最近、出力管はオリジナルと異なる(EL34か?)がSQ-38の復刻版SQ-38UもLUXMAN社から発売される。
製品名SQ78  発売時価格29,700円 発売月日1967年10月 外形寸法(mm)348x130x215 重量8.3Kg スペック歪率:1% 出力:10W×2(8Ω) 6RA8管球式プリメインアンプ 管球構成 12AX7(X3) − 6AN8(X2) − 6RA8(X4)

  本体内部構造は王道室参照


     

6RA8(NEC) 
MT出力管 内部でペントードをトライオード接続した構造、互換同等品はほとんど見当たらないため幻の存在となってしまった。現在に至って6RA8の代替をするにはEL84等をソケットでピン番変更して3接として使用するしかないがオリジナルの音とは遠いものとなろう。6RA8は音質も小型の外観からは想像できない低域のスケールと中高域の緻密さ、抜けの良さは逸品で有りMT管では稀有な存在である。6RA8の代替方法はマテリアルを参照 6RA8のピンデーターと出力は管球資料室参照
MT三極管の概念を覆す艶と抜けの良さ、さらに中低域の豊かさは銘球といえる。
一世風靡したが今や幻の存在となってしまったNEC製 6RA8 (下) 多極管を内部接続3極管としたMT管である。音質は3極のしなやかさと多極のパワフルを持った・・素晴らしいの一言!

45 RCA製 ST管のなか今でも伝説の銘球 (右)シングル出力わずか2Wであるが、ローサーやグッドマン、アルテックのような高能率スピーカーとの組み合わせにより抜けの中高域、濁りのない伸びやかな低域、艶のあるボーカルなどで人気が高い。 フィラメント電圧は2.5V 何処から見ても黄金比率で文句のつけようがない直熱管である。
RCA製 45
   NEC製 6RA8            


        オートグラフ  タンノイ
(Tannoy) は、ガイ・ルパート・ファウンテンが1926年に創業したイギリスの高級スピーカーメーカーである。1940年代末にデュアルコンセントリック(同軸2ウェイ)式のユニットが開発された。同軸2ウェイ型は、低音用のユニット(ウーハー)の中央に高音用のユニット(ツィーター)がはめ込まれたように組合わされたもので、点音源に近くなるため、定位がよいとされる。タンノイの同軸2ウェイ型はツィーターをホーン型として、ウーハーのコーンをその延長にするという独特のものである。同軸2ウェイスピーカーユニットの構造は王道室参照
       伝統の名機 オートグラフ      現行高級機 Westminster ROYAL 


オートグラフは1954年に発表されたコーナー設置型バックロードホーンスピーカーでオーディオマニアの憧れの的であった。今でもWestminster ROYALなど高級機種は前記のユニットを用いたものを一貫して発表し続けている。その音は独特で、弦楽器の音などは、独特の繊細さと艶がある。スピーカの「女王」または「貴婦人」と呼ばれ特にクラシック音楽に定評がある。

TANNOY(タンノイ) Westminster ROYAL/SE
伸長3メートルにも及ぶバックローデッドホーンは、ウーハーの2.5倍の口径に等しい低域再生能力を獲得。クルトミューラー社製ハードエッジ型ウーハーとツイーターホーンを強力な磁気エネルギーを持つアルニコマグネット型式/オール・ホーンシステム●使用ユニット/38cm(15インチ)同軸2ウェイ(ALCOMAX-III、ツイーターホーン24K金メッキ処理)●インピーダンス/8Ω●クロスオーバー周波数/1kHz●能率/99dB(W/m)●許容入力/135W(連続)550W(最大)●周波数特性/〜22kHz●内容積/530リットル●外形寸法/980(W)×1,395(H)×560(D)mm●質量/138kg

DIG アルティック
409B 8in(20cm)同軸ユニットを収めたDIGは小型スピーカではあるが、同社大型システムA7をほうふつとさせる音で名を残している。明るく伸びやかで張りと色気のボーカル表現は伝説的。現行では後継同軸ユニット CD408−8A が入手可能で有りスピーカBOX自作派には推奨したい。伝統的にアルティックのユニットは効率がよいので小出力のシングルアンプに適合している。

アルティック 409B 8in(20cm)同軸ユニット    
      

タンノイ 10in(25cm)同軸ユニット イートン実装品 ゴム引き系のコーンエッジは耐久性があり張り替える必要がいまだに無い!
 

真空管についてのよくある疑問(迷信)
  
*球は寿命が短い?・・・・・ 設計と使い方で数十年は持つ。前記SQ78は球を交換後20年使っている。ソケット実装なので互換の球を差換える楽しみもある。予熱を行い定格の80パーセント以下で使用していれば電球と違い長寿命、構造が簡単明瞭なので他の部品交換や修理改造も容易である。石はそれ自体寿命は長いが他の部品劣化や本体に飽きが来たり、複雑怪奇な回路なため、修理不能や新製品サイクルが早くて買い替えなど、本体レベルで見ると短い。

*周波数特性が狭い?・・・出力トランス(OPT)などが入り帯域は少し制限されるが逆に不要な高調波をカットしてくれる。真空管とOPTは可聴領域に十分過ぎるF特性を持っている。とくにトランスドライブの中低域の厚みは格別の良さがある。

*最大出力が少ない?・・・ 家庭で普段聞いている音は数ワットもあれば十分、連続大出力は不要。特に3極管は回路がシンプルでスピードが出るため小出力時に純粋な音を奏でる。球は高電圧駆動とシンプルさから、小音量でもダイナミック感がある。低能率SP等で大出力が必要とならば、KT−88のPP(50W×2)またはパラPP(100W×2)もある。 石(FETとなるが)で球並みの性能を求めるとかなり高くつく。

*歪率が大きいのでは・・・ 石の場合、広帯域と無歪大出力は強NFBを掛ける事が必須だが、歪が0.1%位でも全く聴けない音になる。厚化粧を取れば見掛け倒しの観・・・過去の苦い経験?石は非直線部分が多いため組み合わせや帰還で総合特性を維持している。球は整流管を使用するとピークでクリップしても穏やかで耳障りな歪音はでにくい。特にシングルアンプでは出力波形歪が上下非対称なため、数%でも気にならない。特にWE300Bは直線性が良く低歪で別格である。歪から発生する高調波も倍音である2次波が多く耳障りな奇数波はでにくい。

*その他の雑学的特徴・・・石は静電気や放射線に弱いが球はほとんど影響されない。核シェルター用に推奨。消費電力は石のA級増幅とほとんど変わらない。見た目にも発光していて管の熱は結構出るので冬は暖房用に、夏はダイエット用に推奨。


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